雨ニモマケズ 風ニモマケズ
宮沢賢治(本人の手帳)
【意味】
どんな困難にも負けない健康な体を持ち、よく働き、欲はなく、質素な暮らしを心がける。穏やかで公平公正な心を持ち、困っている人のために行動し、いつも他の人のためを思っている。それでいて、みんなから褒められようと思わない。正しい人間の在り方を考え、世の中に貢献したいと願う生き方。そんな理想も、現実の厳しい経験を重ね、世間にもまれるうちにわすれていくのかもしれません。けれど、それを理想とした子供の頃を思い出し、未来を信じてひたむきに生きたいものです。
明日は明日の風が吹く
河竹黙阿弥
【意味】
将来のことは誰にもわかりません。明日、突然の幸せが訪れるかもしれませんし、思いもよらぬトラブルが起きるかもしれません。それなのに、あれこれと先のことを心配して何になるのでしょうか。今日は今日、明日は明日と気持ちを切り替えてみるのも大切なことです。先のことを悩むよりも、今この瞬間を思い切り生きる。それが明日を切り開く力になるのです。
我事において後悔せず
宮本武蔵『独行道』
【意味】
いつも正しく、失敗もせずに生きている人はいません。誰でも間違いや失敗を必ず犯すものです。そして、誰もがそのことを後悔します。しかし、いつまでも悔やみ続けるのではなく、失敗を素直に受け入れるようにしましょう。そして反省し、得た教訓を次に生かすのです。大切なのは過ちから学びとり、次の一歩を踏み出すこと。そうすれば、それが経験となって積み重なっていくのです。
不自由を常と思えば不足なし
徳川家康『東照公遺訓』
【意味】
生きていれば、思うままに、自由にならないことも多いもの。そんなときはつい苛立ったり、愚痴をこぼしたりするものです。しかし、何もかもが思い通りになる人生なんてありません。不自由するのが当たり前だと思えば、不満を感じることもないはずです。じっと時期をうかがい待つ忍耐力を養えば、一時の焦りで失敗するようなこともなく、自分の人生を着実に歩んでいくことができるのです。
雨降って地固まる
皆虚『世話尽』
【意味】
激しい雨が降れば、土壌は雨に濡れもろくなってしまいます。しかし、雨がやんでしばらく経てば、それまで以上に強固に、そして滋養豊かな土壌となります。人生も同じです。生きていれば、悲しいことやつらいこと、そして失敗することは多々あります。しかし、それらを乗り越えた後、私たちの心はより強く、より豊かになっているのです。失敗を恐れず、すべてを受け入れていけば、あなたの内面はますます豊かに育まれていくのです。
たのしきとおもふは、たのしきもとなり
松平定信『楽亭壁書』
【意味】
私たちは、楽しさは周りから与えられるものと考えがちです。しかし,どんなことでも前向きな気持で工夫を持って取り組めば、そこに楽しさが生まれます。反対に、やる気を出さずにだらだらとやっていては、面白みを見出すのも難しいでしょう。楽しさはその人の心の持ち方によって変わるのです。どんなときも前向きに取り組む姿勢を忘れなければ、つらいことや苦しいことにも、楽しみを見つけることができるでしょう。
われ十四才のことが、またあるか
徳川頼宣『名将言行録』
【意味】
私たちはときどき、後からでもできる、チャンスはまだあると考えて、行動を控えてしまうことがあります。しかし、そのときとまったく同じ機会が巡ってくることは二度とありません。そのときにつかんだチャンスは、そのときだけ生かすことができます。それを決して忘れずに常に挑戦を続けていけば、より多くの経験を積み、成長していくことができるのです。
運は天にあり
作者不詳『太平記』
【意味】
運は、自分で決められるものではなく、天が決めるもの。自分の力だけではどうしようもない部分があります。ですが行動や努力次第で、運命を切り開くことはできるのです。やれることはすべてやって、後は天にまかせようという決意をもって物事に臨みましょう。そうすることで、運をも味方につけて、目標を達成することができるでしょう。
この世にて慈悲も悪事もせぬ人は さぞや閻魔もこまりたまわん
一休宗純『狂歌問答』
【意味】
世の中には、他人を思いやり、情け深い人もいる一方で、何らかの事情で悪事に手を染める人もいます。また、生きていく中で誰しも失敗したり、人を傷つけてしまうこともあるでしょう。しかし、それも生きていればこそなのです。善いことも悪いことも何もせず、平然と生きている人が、本当に生きていると言えるでしょうか。ときには失敗することがあっても、間違いを恐れずに行動する、それが大切です。
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず
鴨長明『方丈記』
【意味】
川の流れは絶えることがなく、常に移り変わっていきます。淀みに浮かぶ水疱も、消えたり生まれたりして、一つとして同じではありません。世の中も同じです。私たちには勝者も敗者もなく、大きな流れの中の小さな存在でしかありません。だからおごることも、自分の力を過信することもなく、人に支えられ、生かされていることに感謝して生きていきましょう。
徳に勤むる者は、これを求めずして、財おのずから生ず
西郷隆盛『西郷言行録』
【意味】
儲けることばかり考えている人が、実際にお金を貯めるのは難しいものです。お金を第一に考えていると、地道な努力をやめてしまったり、人を大切にすることを忘れてしまうからかもしれません。お金のことなど考えずに、地道な努力を続け、人を大切にして心を磨くこと。そうすれば、多くの人に認められて、たくさんの協力が得られるようになります。そのときお金も自然と集まってくるのです。
人間五十年、化天の内をくらぶれば夢幻のごとくなり
作者不詳『敦盛』
【意味】
織田信長が好んで舞ったといわれる幸若舞『敦盛』の一節です。人間の一生は短く、天上の世界と比べれば、夢や幻のようなもの。ときには、その短さに焦りや虚しさをおぼえることもあるかもしれません。しかし、人生が永遠と続くものならば、誰も懸命にいきていこうとしないでしょう。人生が短くはかないものだということが分かっているからこそ、人は自分の夢のためにすべてを賭けて生きていけるのです。
苦は楽の種、楽は苦の種と知るべし
徳川光圀『光圀壁書』
【意味】
つらく苦しいことがあっても、それを乗り越えようと努力していけば、やがて喜びが生まれ、しばしの安息を得ることができます。また、楽しいことが永遠に続くこともありません。つまり、苦と楽は背中合わせなのです。もし苦労が目の前に現れたときは、やがてやってくる楽しみを信じて、自ら苦に挑んでいくことが大切なのです。
富めども貧を忘るることなかれ
作者不詳『実語教』
【意味】
成功を目指してがんばっているときは苦労も多いものですが、仲間を大切にし、自分も最大限の努力をします。その仲間と自分の努力が、成功と豊かさの礎となるのです。しかし、成功し豊かになったとたん、人はその苦労を忘れてしまうもの。物事が順調に進んでいるときも苦労していたときのことを忘れない。どんなに豊かになっても、貧しくがんばっていたころを忘れない。そうすれば、幸せな日々が続いていきます。
仏とはなんだらぼうし柿のたね 下駄も仏も同じ木のはし
一休宗純『狂歌問答』
【意味】
仏像は人に大切にされ、ときには触ることさえはばかられる神聖なもの。一方で下駄は、毎日足にしかれてこき使われる道具。まったく違うもののように思えますが、もともとはどちらもただの木片にすぎないのです。常識、慣習、見た目、噂……、私たちは多くのことにとらわれ、知らず知らず偏った目で物事を見てしまいます。しかし、それは本質をとらえていません。物事の本質を見極めるようにすれば、とらわれから解放され、自由に豊かに生きていけるでしょう。
人間の一生は誠にわずかの事なり 好いた事をして暮すべきなり
山本常朝『葉隠』
【意味】
人の一生は本当にわずかなもの。だからこそ、好きなことをして暮らしていくようにしましょう。したくないことに時間を費やし、嫌な思いをして人生が過ぎていくのは、あまりにももったいないことです。それよりも、自分のしたいこと、好きなことを精一杯やりきり、充実した人生を送るほうが豊かで幸福といえます。どのように生きるかは、自分次第で決められるのです。
家はもらぬほど、食事は飢えぬほどにてたる事なり
千利休『南方録』
【意味】
家は雨露をしのげる程度、食事は飢えない程度にあれば、十分なもの。しかし人は、素敵な家に住みたい、おいしいものをたくさん食べたい……。そんな気持ちを持つもの。決して悪いことではありませんが、そうした気持ちはときとして際限なく大きくなり、身近な幸せに満足できなくさせてしまうのです。物事にはすべて適度があります。適度をわきまえ、ないものばかりをほしがるより、今ある幸せを大切に感じるようにしましょう。
花のいのちはみじかくて 苦しきことのみ多かりき
林芙美子『放浪記』
【意味】
美しい花も、その姿を見せるのはわずかな間だけ。その生命のほとんどの時間は、花を咲かせるまでの成長に費やされます。人生も、若く楽しい時期はほんのわずかかもしれません。それ以外は長い努力と成長の日々が続くのです。しかし、その成長の過程にこそ、自分を磨く喜びがあふれ、夢や友情、愛が眠っているのです。だからこそ、苦しくても、花を咲かせるそのときまで、懸命に生きていきましょう。
世の中の人はなんとも言わば言え わが為すことは我のみぞ知る
坂本龍馬『龍馬詠草』
【意味】
新しい生き方や考えは、未来を切り開く力になります。ですが、その一方で批判の的になったり、笑われたりすることも。そんな反応を受け、新しい道に踏み出すことが怖くなるかもしれません。批判や嘲笑は常識や世間体に囚われた人がすること。人に何と言われようと自分のすることの意味は自分だけが知っている。そんな熱い思いと自信を持って歩いていけば、自分の未来だけでなく多くの人の未来を作り出すでしょう。
兎角に人の世は住みにくい
夏目漱石『草枕』
【意味】
理屈ばかりでは人と反目してしまう、人の心を大切にし過ぎると流されてしまう、自分の意地を通すと何事も思うように進まない……、世間というのはとかく住みにくいもの。その住みにくい世の中で生きていくためには、心を癒やしてくれるものが必要です。芸術、スポーツ、趣味、仲間、何でもいいのです。現実からそっと離れて、気持ちを癒やしてくれる時間と空間があれば、つらいことがあっても、前向きに生きていくことができるでしょう。