疑うがゆえに知り、知るがゆえに疑う
寺田寅彦『知と疑い』
【意味】
いつもは当たり前だと思っていること。それは本当に当たり前なのでしょうか。角度や立場を変えて見てみると、これまでとまったく違う風景が見えてくることがあります。どんなことでも疑いを持って見てみることで、新たな見方を手に入れられます。そして新たな見方を手に入れれば、今までの常識に疑問が生まれます。これを繰り返すことで、私たちは学び成長していけるのです。
初心を忘るべからず
世阿弥『風姿花伝』
【意味】
一つのことに熟達しても、習い始めのころを忘れないようにしましょう。習い始めのころは未熟で失敗も多いものですが、そこからたくさんのことを学びます。熟達したからといって、その学んだことを忘れてしまっては、成長するどころか、能力が衰えてしまうかもしれません。どんなに腕が磨かれても、初心のころから学んできたことを忘れない。それを心がければ、その成長は揺るぎないものとなるでしょう。
下手は上手の下地なり
寒河正親『子孫鑑』
【意味】
どんなことでも最初は下手なもの。それからだんだんと習熟して、上手になっていくのです。ですから下手だからという理由で物事をあきらめる必要はありません。下手は上手への道。上手になるための下地作りなのです。下手だからといって落ち込まず、少しずつでも着実に努力を重ねていけば、自然とうまくなっていけるのです。
稽古に神変あり
松江重頼『毛吹草』
【意味】
どんなことでも懸命に努力を重ねるうちに、高い境地に達することができます。最初ななかなか思うように進歩せず、歯がゆい気持ちになるかもしれません。ですが、あきらめずに続けていくことで、やがて熟練してきます。そして、さらに鍛錬すれば、限界を越えた力をも身につけることができるのです。それはどんな人でも可能なこと。努力さえすれば、あなたもきっとできるのです。
生は貪るべし、死は畏るべし
山上憶良『万葉集』
【意味】
命を貪るようにして生きる。それは、一瞬も無駄にしないという気持ちを持って、自分の目標のために努力を重ねるということです。そんな気持ちで生きていれば、学びがあり、やりたいことの置くをやり遂げられるはず。そして、やがて訪れる死はありがたく受け入れましょう。一日一日を大切に精一杯生きていけば、死に接したとき、悔いのない一生であったと言えるようになるでしょう。
至誠天に通ず
内田魯庵『社会百面相』
【意味】
どんなにがんばっても人に認めてもらえず、悔し思いをすることがあるかもしれません。そんなときは、つらく苦しく投げ出したくなるかもしれません。ですが、あなたの心がまっすぐで、誠意を持って行動しているのなら、きっと認めてもらえる日がきます。なぜなら、どんな人も最後は真心や誠実さに心を動かされるからです。一点の曇りもないほどの誠意があれば、気持ちが通じて、必ず道が開かれるでしょう。
我、人に勝つ道を知らず 我に勝つ道を知る
柳生宗矩『葉隠』
【意味】
仕事や勉強などでライバルを持ち、競い合うのはよいことです。しかし、ライバルに勝つことばかり考えていては、自分を成長させるのは難しいかもしれません。なぜなら、本当に戦わなくてはならない相手は自分だからです。怠けようとする心に打ち勝つのも自分。ライバルがいないときでも、さらなる高みを目指すのも自分。人に勝つ方法よりも、自分に勝つ方法を身につける。それが成功への近道なのです。
命を知れる者は天を恨みず、己を知る者は人を恨まず
作者不詳『十訓抄』
【意味】
自分の進むべき道を知っている人は、どんな苦難があってもその道を与えた天を恨まないものです。また、自分のことをよく知っている人は、不幸であっても、人のせいにしたりはしないでしょう。それは、天や人を責めたところで、決して自分のためにならないことを知っているからです。自分の力を知り、進むべき道を定めたなら、後は心惑わされず、静かに着実に歩を進めていきましょう。
学問する人は、謙を以て基とす
貝原益軒『大和俗訓』
【意味】
何かを学ぶときは、何よりも謙虚さが必要です。謙虚さとは、自分の能力や知識、経験よりも人からの教えや忠告を大切にして、素直に受け入れること。そして心をまっさらにして、積極的に学び、教えてくれる人を尊敬することです。そうすることで偏った考えを持たなくなり、新たな知が得られるのです。この謙虚さがあれば、しっかりとした土台が気づかれ、学びはどこまでも進むでしょう。
己を責めて人を責むるな
徳川家康『東照公遺訓』
【意味】
うまくいかないことを人のせいにしていては、自分の成長は望めません。たとえ、どう考えても相手が悪いような場合でも、自分がどう変われば問題が起きないのかを考えてみましょう。そうすれば未来に生かせる知が増え、自分自身を成長させることができます。すべてを自分の責任だと考えるのはとても難しいもの。ですが、そこから学ぶことができれば、さらなる飛躍につながるのです。
事を論ずるには、当に己れの地、己れの身より見を起すべし
吉田松陰『丙辰幽室文稿』
【意味】
何かを学び、意見を述べるときは、自分の立場に基づき、自分に関わりのあるものとしてその物事をとらえましょう。自分との関わりを見つめながら、そこから離れることのない、地に足のついた意見と信念があってこそ、初めて人を感化することが口にできるのです。やがてその態度が多くの人からの信頼を集め、大きな物事をも動かす力となっていくのです。
少にして学べば壮にして為す
佐藤一斎『言志四録』
【意味】
若いころから目標に向かって学べば、成人するころにはその目標が達成できるでしょう。そして成人してからも学べば、年老いても衰えることがなく、充実した日々を過ごせます。年老いてからも学べば、死んだ後も名を後世に残すことができるでしょう。つまり、学びは一時のものではなく、続けることで、その力を際限なく増していくもの。始めるのに遅いということもありません。いつ始めようとも、続けることが大切なのです。
天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず
福沢諭吉『学問のすすめ』
【意味】
人はみな平等に生まれてきます。生まれながらにして人より偉い人もいなければ、劣った人もいないのです。では、なぜそこに地位や財産の差が生じるのでしょうか。それは、その人の学びや努力によるもの。懸命に学び、多くの知識や技術を身につけた人は、それに見合う立場や財を手にすることができるのです。自らを高め、富や豊かさを得ることは誰にでもできることなのです。
過まれるを改むる善の、これより大きなる無し
慈円『愚管抄』
【意味】
失敗や間違いがあったときは、それを正当化したり、言い訳したりして、つい自分を守ろうとしてしまいます。しかし、それでは失敗を見直してそこから学ぶ機会を、自ら捨ててしまうことになるのです。失敗したときに大切なのは、それをすぐに認め、反省し、改善すること。そうすれば同じ失敗を繰り返すこともなく、すみやかに大きく成長できるのです。
一理を学ば一理を行へ
二宮尊徳『金言集』
【意味】
どれほど多くの学びを重ねても、それだけでは実際に役立つことは少ないでしょう。学んだことは必ず一つひとつ実践して確かめるのが大切です。そうすることで確実に自分の身につき、応用も自在に効くのです。何かを学ぼうと思うなら、机の上で本を読むだけではなく、その学びを日々の生活や仕事などに使ってみましょう。行動に移すことで、読むだけではわからなかった様々なことが理解できます。
学道に勤労して他事を忘るれば、病も起こるまじきかと覚ゆるなり
道元『正法眼蔵随聞記』
【意味】
嫌なことを無理矢理やったり、やることもなく怠惰に過ごしてばかりいると気持ちがふさぎ込み、心ばかりか体までも悪くなってしまいます。一方、ほかのことはすべて忘れてしまうほど、勤勉や仕事に一生懸命打ち込んでいれば、喜びや充実感で満たされます。そんなときは、心も体も健康でいられるでしょう。勉強や仕事に励むことで、健やかな心身を築き上げる。そんな気持ちを持って日々臨みましょう。
格に入り格を出でて、はじめて自在を得べし
松尾芭蕉『祖翁口訣』
【意味】
学びでも仕事でも、最初は守るべき決まった型や基礎というものがあります。人によっては、それがうとましく、すぐに自分のやり方でやってしまうこともあるかもしれません。しかし、型や基礎は、その道の先人達が作り上げた最良で最高の学びの方法なのです。回り道のように思えても、まずは型や基礎を繰り返し、自分の一部にしましょう。そうして型を意識する必要さえなくなったときに、初めて個性が発揮できるのです。
古に稽へて今を照らす
太安万侶『古事記上表』
【意味】
古くてもよいものを理解し、大切にすることで、今のあり方を考え、将来の参考にすることができます。新しいことに挑戦するときは、つい将来にばかり目を奪われがちです。しかし、今まで積み重ねられてきた歴史の中にこそ、現在や将来の指針となるものが眠っているのです。昔のことだからと軽く扱わず、十分に理解し参考にしようと努めれば、それは光を放ち、今と未来を明るく照らしてくれるでしょう。
たしなみの武辺は 生まれながらの武辺に勝れり
織田信長『名将言行録』
【意味】
生まれながらの才能の違いは、確かにあるかもしれません。しかし、その才能もしっかりと磨き、自らの夢に向かって使うことがなければ、輝くこともなく終わってしまうのです。その一方、目標のために努力し、その結果得た力は光り輝いています。自分で身につけた力は、才能よりも優れているのです。才能があろうとなかろうと、自分をしっかりと磨き上げることで、本当に役立つ力が得られるでしょう。